◎シトラス・フラッド 3

 僕は堪らなくなって、
「おじさん! 大人げないよ!」
 おじさんは蜜柑を食べながら、
「お。また新しい言葉を覚えたな。偉い偉い」
 笑いながら僕の頭を撫でる。
「やめてよ! 僕、もう赤ちゃんじゃないんだから!」
「お。そうか、悪かったな。じゃあ、お詫びの印に君へプレゼントだ」
「プレゼント!? 何、何?」
 顔を上げ、おじさんを見上げる僕の目の前に、また蜜柑の皮。
「えいっ」
 僕の目に向けて、蜜柑の皮を絞る。
「わっ」
 慌てて目を手で覆ったけど、間に合わない。
「やーい、エンガチョ」
 おじさんはそう言い残すと、向こうへと走って逃げて行った。
 僕は何だか悔しくなってきて、涙を浮かべながら叫ぶ。
「…おじさんのバカー!」
 これで暫く、僕は蜜柑が嫌いになった。



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